[反ヘイト 条例への道](1)「まだまし」論

県庁前で街宣する国守衆の仲間信之氏(中央)=3月2日

 男性が繰り返す「エピソード」がある。3月、雨の沖縄県庁前でも同じ話をした。

 「仲井真(弘多)元知事が辺野古の埋め立てを承認した時、ここの反対集会に来ました。ほとんど沖縄の人はおりません。片言の日本語をしゃべる、あるいは本土の方々がほとんどでした」

 排外主義団体「国守衆(くにもりしゅう)」沖縄支部代表の仲間信之氏。直接のヘイトスピーチは避けながらも、新基地への抗議が外部に操られているというデマを流した。

 ヘイトスピーチ常習者の久我信太郎氏と一緒に那覇市役所前で街宣したこともある。久我氏から「友人」と紹介され、マイクを渡された。同じ話をして、「韓国なのか、中国なのか、そういう人たちだったと思う」と言った。

 3月、仲間氏に直接聞いた。

 -根拠はあるんですか。

 「そうだったと思いますよ」

 -私も2013年末のその集会を取材していましたが、中国語も韓国語も聞いていません。差別デマではないんですか。

 「何が言いたいの」

 仲間氏は宜野座村議。公人として差別を非難すべき立場にありながら、逆に差別をまき散らしている。悪影響は、より深刻だ。

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 久我氏が毎週水曜日に那覇市役所前で繰り返したヘイト街宣は、市民が先回りして座り込むことで防いでいる。阻止は約2年前から続き、13日にはついに連続100週を迎える。

 ヘイトスピーチ規制の機運が高まり、県は条例制定を進めている。ただその過程で、「まだまし」論がたびたび顔をのぞかせる。

 在日コリアンの集住地区があり、悪質なヘイトデモが繰り返されてきた川崎市や大阪市に比べれば沖縄は「まだまし」。だから、条例も「それなり」でいいのではないか-。

 久我氏らは6年以上の活動でため込んできたヘイトスピーチ動画を今も「ユーチューブ」などに投稿し続けている。外国や沖縄の人々に対する差別を扇動する悪質な内容で、市民は削除を求めるが、運営会社が応じない。そして、「国守衆」のように、県庁の真ん前で現在進行形で差別発言を続ける者たちがいる。

 ヘイトスピーチ問題の第一人者、師岡康子弁護士は日本も加入する人種差別撤廃条約上、「差別を禁止し、終了させる」ことが行政の義務だと指摘する。

 「街宣に限らず差別は現にあふれ、被害者は差別を恐れ常に身構えて息をひそめて生活している。死傷者が出るほど被害が大きくなってからでは遅い。今、止める必要がある」

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 県がヘイトスピーチ対策条例を「なるべく早期に」制定する方針を示している。論点を見ていく。(編集委員・阿部岳