[反ヘイト 条例への道](1)

師岡康子弁護士

 ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士が、沖縄県が2月に公表した対策条例の素案を点検した。論点ごとに見解を聞いた。(聞き手=編集委員・阿部岳

■総論

 6年前にできた大阪市条例、国のヘイトスピーチ解消法ではヘイトスピーチを止められなかった。結果が出ているのに、おおむねそれらを下回る内容になっている。前文の掲げる、差別がなく「誰もが認め合い多様性を尊重する社会を実現」するには、効果を上げている川崎市条例をベースにした実効性ある規定が必要だ。

■禁止規定

 差別を止めるためにはまず禁止規定は不可欠で、人種差別撤廃条約もそれが最も重要と定める。法令で禁止することが、差別を許さない社会規範を作る最も有効な教育・啓発手段になる。差別は被害者の尊厳を根本的に傷つけ分断と暴力を生む、社会にとって一番の害悪。当然、法令で止めるべきだ。

■罰則

 悪意ある人たちによるヘイトスピーチを止めるためには罰則が必要だが、川崎市条例のように刑事罰にするか、(より緩やかな)行政罰にするかの議論はあり得る。3回にわたって審査会の意見を聞く川崎方式なら、乱用は防げる。

■沖縄ヘイト

 民族、国籍などに加え、出身地による差別を禁止することで沖縄ヘイトにも対応できる。沖縄の人々の自己認識が多様であっても、「土人」など沖縄出身を理由とするヘイトスピーチを認定することは可能で、罰則も適用できる。

■ネット対策

 差別書き込みに対して、毎回審査会を開いてからプロバイダーに削除要請するのでは時間がかかり過ぎる。拡散防止のためには、三重県などのように行政や委託先がネットモニタリングして、専門家作成のマニュアルに抵触するヘイトスピーチは迅速に業者に削除要請する仕組みが望ましい。

■県の責務

 ヘイトスピーチを含む差別の撤廃に向けた基本方針と基本計画の策定、それを実現する人権課などの担当部署設置が欠かせない。解消法の定める相談体制、教育、啓発の具体策も必須で、条例に書き込むことで実施を担保できる。