高級米も「大苦戦」

 なぜ筆者がそのように考えるのかというと、実はこれまで日本人の主食だった「米」に関しても、同じような現象が見て取れるからだ。

 世間が「高級食パンブーム」にわく少し前の16年ごろから、「高級米ブーム」が起きていたことはあまり知られていない。この時期、高級ブランド米の代名詞であるコシヒカリに肩を並べる「高級米」が続々と世に送り出されているのだ。その代表が17年に登場した際に、最高級魚沼産コシヒカリに近い、5キロ3200~3500円の値をつけた「新之助」だ。

 この「高級米ブーム」も「高級食パンブーム」と同様、大きな話題となって一部の裕福な人たちから「毎日食べたい」と熱烈な支持を受けた。が、一方で一部の庶民からは高級食パン同様にネガティブな反応が見られた。「試しに一度買ってみたけどまずい」「高すぎる」とボロカスに叩く人も出た。

高級米も苦戦した(写真提供:ゲッティイメージズ)

 そして、こちらも高級食パンブーム同様、徐々に苦戦していく。『ブランド米が乱立、「いきなり超高級」で背水の陣』(日本経済新聞 2017年10月26日)という記事にはこんな苦境がレポートされている。

 『ブランド米が乱立するなか、数年前に出たある銘柄について「なかなか売れなくて困る」と打ち明ける小売店や卸が少なくない。都内の複数のスーパーでこの銘柄の精米日を確かめてみると、1カ月たっている袋もあった。しかし、袋の裏側には「精米から2週間程度が鮮度の目安」などと書いてある』

 このように人気はかんばしくなかったが、スーパーや小売店はブランド米を撤去もできず値下げもできない。記事中に登場した大手コメ卸幹部によれば、「県や代理店からブランド力を維持してほしいとの要請が強い」そうで、「我慢比べ」の状態だという。

 つまり、米の生産量が大きく落ち込む中で、自治体が生産者の生き残りを目指して、付加価値向上を目指したわけだが、結局「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という日本社会の暗黙のルールの前に「大苦戦」をしていたというわけである。

 「高級食パン」という新たなジャンルで付加価値の向上を目指したものの、結局「高すぎる」「ぼったくりだ」と閉店続出に追い込まれている今のパン業界と同じことが起きていたのだ。