沖縄県那覇市牧志の住宅街に、安価で定食が食べられる小さな食堂がある。200~300円で栄養バランスが取れた食事を提供するのは、昨年12月にオープンした「カカズコテージ食堂」。店主の嘉数慶子さんの人柄も魅力で、毎日のように顔を出したり、長居してゆんたくを楽しむ常連も。半年足らずで地域の人に愛される居場所になった。嘉数さんは「おなかも心も満足してもらえたらうれしい」とほほ笑む。(学芸部・嘉数よしの)
3児の子育てと地域活動に励んできた嘉数さんが食堂を始めたのは、新型コロナウイルスの流行がきっかけ。23歳になる三つ子が小学生の頃から携わる放課後子ども教室の活動が休止を余儀なくされ、「地域のためにできること」を模索した。
還暦前に「やりたいことを悔いなくやりたい」という思いもあった。2020年10月ごろに自宅の空きスペースを改装して、不用品を売買する「ゆんたくひろば」をスタート。数百円で衣類やかばんなどを購入でき、ソファでくつろぐこともできるため、お年寄りを中心に人が集うようになった。
次第に「食堂があったらいいね」との声が上がるようになり、嘉数さんは「家庭料理で良ければ」と開店を決意。再度自宅を改装し、「誰でも気軽に食べられるように」と200円で定食を出し始めた。
メニューは日替わりで、肉や魚の主菜にみそ汁と小鉢が付く。日によって沖縄そばやカレーライスも用意、100円でコーヒーとおやつも楽しめる。利益はほとんどなく「材料費と光熱費の分だけ」の価格設定だ。
口コミで利用者が増え、中には「昼食も夕食もここで」という客もいる。常連の男性(81)は「おいしくてメニューも変化があるので飽きない」。1人暮らしの女性(71)は「バランスの取れた食事を自宅で作るのは大変で、とても助かる。いろいろな人とゆんたくできるのも楽しい」と話す。
嘉数さんの穏やかで優しい人柄も客を引き付けている。1人で切り盛りするのが難しくなり、常連の女性らが店をサポート。民生委員として共に活動した経験がある知念榮子さん(70)は「みんなのためにできることは何でもやろうとする人」と嘉数さんを評価。「気兼ねなく集まれる居場所は高齢者には特に大事で、私も協力していきたい」と語る。
嘉数さんは「楽しみながら、無理せずやっているけれど、皆さんに親しんでもらえてうれしい」とにっこり。「親戚の家に来るような感じで利用してもらえたら。夏休みには子どもたちも来られるようにしたい」と考えている。
営業は日曜日と月曜日、水曜日、木曜日で、午前11時~午後5時半頃まで。