沖縄市出身のイラストレーター、我喜屋位瑳務(いさむ)さん(47)の個展「wackycore」が東京・神楽坂のギャラリーFARO Kagurazakaで開かれている。タイトルは「とっぴな・狂気じみて風変わりだが面白くて興味をそそる」の意味を持つwacky(ワッキー)に、coreをつけた造語で“ハードコア”のようなジャンルを目指す。沖縄に残るアメリカ文化のホラー・SF映画、アメリカンコミックなどに色濃く影響受けた新作ドローイングに、コラージュ作品を加えた全21点を展示している。5月14日まで。

「SNSを通じて沖縄の方の反応があるのが嬉しい」と語る我喜屋さん=東京都新宿区(小笠原大介東京通信員撮影)

 美里高校卒業後にイラストレーター・寺田克也氏の作品と出会い、アートの世界に入った我喜屋さんは25歳で上京。当初はPCを使ったデジタルアート中心だったが、「情熱のペンギンごはん」(1980年)などヘタウマ漫画の先駆者となった湯村輝彦氏から助言を受け、日常にありふれる素材を組み合わせて1枚の画にするコラージュ作品の創作を始めた。

 アメリカのポップカルチャーに影響を受け、コミカルの中にもオカルティズムが織り交ざる独自の作風。2009年には若手芸術家の登竜門となる1_WALL展で大賞を受賞。近年ではBiSHのアユニ・Dさんによるソロプロジェクト「PEDRO」をはじめ、LiSA、YUKI、AKB48といった有名アーティストのビジュアルやグッズデザインを手掛けるなど、幅広い活躍を見せている。

 ドローイングをSNSでほぼ毎日発信。「コミュニケーションが目的だが、自分の心の安定につながっている」という。その時々の発想を自由に描いたイラストは人気で、毎年末にはドローイングのみを集めた個展も開いている。さらに、ペットで“神”とあがめる愛らしいモルモットのシモンちゃんとの写真はフォロワーから高い支持を集める。

 東京で約3年ぶりとなる個展「wachycore」では、「やんばるアートフェスティバル2021‐2022」に出展された神なき後の個人的な神話を描くペインティングシリーズ「BUG/GLITCH」に、新作のドローイングやコラージュ作品を加えて再構成。

 個展のキービジュアルともなっている「鋭い爪を持った緑の熊と少女のコラージュ」は、アメリカから送られきた郵送物の封筒を画材に選んだもの。「海外独特のスタンプや色味、シワを生かした」という。一見、凶暴そうな熊が両手を広げて隠すのは自らの住所。「この熊は個人情報を保護しているんです」と遊び心を見せた。

 音楽関係だけでなく、イベントや書籍のカバーデザインなど多岐に活躍する我喜屋さんについて、プロモーションを手掛けるアートアンドリーズン株式会社の佐々木真純代表は「一見、複雑に見えるが普遍性と現代性を感じさせるシンプルな作品群。より多くの人に知ってもらいたい」と海外展開も見据える。

 我喜屋さんは「首里城の中庭にアシンメトリー(左右非対称)のデザインが取り入れられたように、沖縄の人にはあえてそろえない美意識があると感じる。僕もわざと汚すことで美しくなる感覚があり、アナログの良さを出していきたい。目標は影響を与えてくれた本場のアメリカで個展をすることです」と意欲を見せた。 (小笠原大介東京通信員)

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 ギャラリーFARO Kagurazaka 東京都新宿区袋町5―1 午後1時~7時 日・月曜休館(4月29日~5月5日は営業)。我喜屋位瑳務さんインスタグラムは@guinea_mate_gaki、Twitterは@gakism。