沖縄県内各地の公民館や共同売店の敷地内に下がる米軍払い下げ品の「ガスボンベ」。戦後、集落の非常時や時報、集会の知らせを告げる鐘として使われた。長さ約130センチ、回りは約75センチ。たたくと金属音が遠くまで響いた。放送設備の整備でそのほとんどが役目を終えた中、除夜の鐘として活用するケースもある。北部地域の16集落で確認できた釣り鐘の一部を紹介する。

「火の用心」「交通安全」と記された鐘=名護市嘉陽

鐘の思い出を語る友寄景喜さん=大宜味村上原区

台風で埋められたことがある鐘=大宜味村大兼久

「火の用心」「交通安全」と記された鐘=名護市嘉陽 鐘の思い出を語る友寄景喜さん=大宜味村上原区 台風で埋められたことがある鐘=大宜味村大兼久

 大宜味村上原区では公民館裏、コンクリートの柱に下げられている。同区の友寄景喜さん(99)は「いい音がして集落全てによく聞こえたよ」。同村大兼久区の鐘は1959年の「シャーロット台風」の影響で土砂に埋められた。現在は掘り起こされ、公民館構内につるされている。同村謝名城区では約30年前、集落で火事が発生した際に鐘の大きな音で区民が難を逃れた。現在は売店前にあり、除夜の鐘として使われる。

 東村川田区では「勝乃宮」拝所の境内につるされている。仲本政勝区長は「除夜の鐘として年に1度鳴らす。大みそかになると列を作るほど」と話す。

 国頭村与那区の字誌には1964年当時、釣り鐘が写った写真が掲載されている。大城靖区長(62)は「区内放送設備が整備されてからは思い出の鐘として売店そばに横たわっています」と笑顔で話した。

 名護市汀間区では民家近くのフクギの木につるされている。過去に区民が子どもたちの登校前と夕方に鳴らしていた。現在は除夜の鐘として活用される。さび付いたままつり下げていることが多い中、同市嘉陽区の鐘はペンキで化粧され「火の用心」「交通安全」の標語が書かれている。鐘は2代目。地域住民によると、停電など緊急事態を知らせるためには現在でも必要だという。

 同市の屋我地島饒平名区の鐘は現在、拝所を囲むガジュマルの木につるされている。新しい公民館ができても鐘の場所は同じ。区内放送が整備されてからは鐘の音を聞いたことがない区民も多い。同区の大城將計区長は「歴史の記念のような鐘だから朽ちるまで下がっているだろう」と言う。(玉城学通信員)