復帰後、沖縄経済は大きく成長した。

遊ぶ子どもたち=1968年ごろ(山田實氏提供)

 観光業は県内のリーディング産業に発展。観光収入は2018年度、過去最高の7334億円に到達した。

 それに伴い県内総生産(実質)は19年度実績見込値で4兆3540億円となり、復帰時の約7・2倍になった。コロナ禍で一時マイナスとなったものの、県経済は21年度2・5%、22年度も2・3%の成長が見込まれている。

 一方、県民の低所得は変わらない。18年度の1人当たりの県民所得は239万円で全国最下位。国民所得の74・8%にとどまる。22年度の実績見込みはコロナ禍の影響を受けさらに下回る225万円となった。

 1人当たりの県民所得が伸び悩む背景には、他産業に比べ生産性が低い第3次産業の割合が8割を占めるという、他県にない偏りがある。

 そんな偏りの根をたどると米軍統治下の「基地依存型輸入経済」に行き着く。軍事優先の政策で労働者が基地建設や基地内雇用に吸収された結果、基地から生まれた利益で輸入品を消費する経済構造が出来上がった。

 沖縄振興開発特別措置法に基づく振興計画は本土との格差是正を目指した。社会資本整備に一定の役割を果たす一方で、今度は公共事業頼みの「財政依存型経済」が課題として浮上する。こうした長年の特殊事情からなる依存型経済が、県内企業の「稼ぐ力」をむしばんできた。

 そこに拍車をかけるのが、利益を県外に流出する「ザル経済」だ。沖縄は経済拡大の恩恵が県民一人一人に届きにくい負のスパイラルに陥っている。基地や財政などへの依存度を極力弱め、自立型経済の構築が急がれる。

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 県民の低所得は「子どもの貧困」につながっている。経済的困窮から生活や教育を大幅に制限される子どもたちの存在の可視化は、戦後から現在までの県内の経済政策の大きな課題を露呈した。

 県内の貧困率は18年度25%で全国の約2倍。そうした実態を背景に高校や大学の進学率も全国最低水準が続く。

 坂晴紀さん(54)が無料塾を始めたのは08年。「お金がないから勉強しても無意味」という子どもたちの声を聞いたことがきっかけだった。個人や企業の出資を募って基金をつくり、中学生3人の通塾支援を始めた。

 その後、NPO法人エンカレッジを立ち上げて県などの委託を受け15市町村で無料塾の教室を運営。現在は生活保護世帯などの小中高生約1200人が通う。教室長でソーシャルビジネス事業部長の村濱興仁さん(36)は「子どもの自立には、可能性を妨げる天井を取り除くことが重要」と話す。

 県の調査では21年度、学習支援した中学3年生の99%が高校に合格。高校生は86%が大学や専門学校に進学した。学びの保障は、子どもたちの自立につながっている。

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 岸田文雄首相は10日、沖縄振興の今後10年間の方向性を示す基本方針を決定した。沖縄振興を真に実効性あるものとするために、エビデンスに基づく施策の展開・検証を強調。県内企業の生産性や「稼ぐ力」の向上を図り、持続可能性のある「強い沖縄経済」の実現を目指す。問われているのは、そのための具体策だ。自立型経済が50年達成されなかったことを思えば、従来の枠を超えた発想で経済構造の転換を図る必要がある。

 最大の目標は県民の所得向上だろう。その結果「子どもの貧困」が解消されれば、成長した子どもたちが、さらに豊かな社会を実現するに違いない。そうした好循環をつくり出すことこそが、ポスト50年に目指すべき方向性だ。