自分の子どもがいじめに加担し、誰かを傷つけていたら…。子どものいじめが社会問題となる中で、そうした不安を抱く親もいるだろう。人気連載中のウェブコミック『エンドレス離婚~もしも結婚生活をやり直せたなら~』では、いじめをしてしまう子どもの心理を、夫婦関係の側面から切り込んでいる。愛する家族を守るために仕事に励んでいた“自称・いい夫”が、子どもの価値観を歪めてしまった背景とは何か。作者のびばるさんに話を聞いた。

『エンドレス離婚~もしも結婚生活をやり直せたなら~』(C)びばる

【漫画】「男の子が髪を伸ばすのは変」6歳の娘が友だちの髪を切り…“わたしはいい子!”泣きながら訴える娘に父親は?

■「男の子らしくない」髪が長いクラスメイトを“いじめる”娘

──離婚がテーマの本作ですが、子どもの人間トラブルについても深く描かれています。

【びばるさん】本作の主人公は、いい父親・いい夫であろうと頑張ってきたけれど、結果的にモラハラになっていたことに気付いていない男性です。その中で「子どもへの影響」を描くことで、この夫婦の問題の根深さが、立体的に浮き彫りになるのではないかと考えたんです。それで、「いじめられている息子」と「いじめをしている娘」という両面のキャラクターを設定しました。

──いじめ問題は、“加害者”の親が気づかないケースもあります。

【びばるさん】いじめられている側の方が、異変に気づきやすいのかもしれません。気持ちが沈んでいる様子が何日も続いていたり、アザを作って帰ってきたり…。また、本作に登場する娘は6歳です。まだ幼いこともあって、自分が“いじめている”という自覚がほとんどないんです。むしろ、「私はこの子に教えてあげただけ」という、その悪意のなさを主人公の写し鏡として描いています。

──髪を長く伸ばしているクラスメイトの男の子の髪を、「男の子らしくない」という理由で切ってしまったエピソードですね。

【びばるさん】髪は「女の子にとって」大切なもの。父親のそんな価値観が心に深く刻まれているから、「男の子が髪を伸ばすのは変」という発想に飛躍した結果でした。極端な行動に見えますが、彼女にとっては、自由に振る舞うことが許されているその男の子に対する「ずるい」という思いが、ずっと溜まっていたんですね。その妬みのような感情を植え付けた元凶は、主人公の無自覚なモラハラにありました。

■「これは花嫁修業だぞ」価値観を押し付ける父親、子どもの影響は?

──主人公・聡はことあるごとに、娘に「これは花嫁修行だぞ」、「いい奥さんになれるぞ」といった声がけをしていて、また娘もそんな期待に応えないといけないと思って、積極的にお手伝いをする「いい子」として描かれています。

【びばるさん】彼女はいわゆる「要領のいい子」なんです。大人の空気を敏感に察して、適切な行動ができるタイプですね。それ自体は悪いことではないけれど、自分がしたいことを我慢してしまうこともあるんじゃないかと思います。この娘の場合は、本当は外で元気に走り回るのが好き。だけどパパは「女の子らしいこと」をすると褒めてくれる。だったら、そう振る舞ったほうが得。そんな行動を自然にできてしまうけれど、やっぱり抑圧って心の奥底に溜まっていくんですよね。

──それがいじめ加害に現れてしまった?

【びばるさん】そんなイメージで描いています。実は私も、学生時代にいじめられた経験があるんです。その主犯格の子は、親の経営するスナックで働かされてたようなんですね。ひどい話ですが、小さい頃から酔った男性客に絡まれたりもしていたようで…。それもあってか、大人をあしらうのがとても上手で、先生からは気に入られている子でした。

──主人公の娘のように、大人の空気を自然に察することができる子だったんですね。

【びばるさん】私は祖母の家で、良くも悪くも甘やかされて育ったので、わりと子どもっぽいタイプでした。そんな私に対する「なんでそんなに子どもらしくいられるの? ずるい」という妬みや怒りのような感情が、彼女の中にはあったんじゃないかと思うんです。だからといって、いじめという行為が正しいと言いたいわけでは決してありません。彼女に対してそんな想像ができるようになったのも、だいぶ大人になってからでしたが…。

──娘も作中で、いじめた男の子のことを「ずるい」と言っていました。

【びばるさん】自分は「女の子だから」、ママのお手伝いをしなきゃいけない。彼は「男の子なのに」、女の子みたいに振る舞えて「ずるい」。本作で描いているいじめの大元にあるのは、主人公の日頃の子どもたちへの声がけや態度、もっと言えば「男性とは」「女性とは」といった凝り固まった価値観なんです。

──家の中で、娘のお手伝いの負担が増えてしまったのは、妻が風邪でダウンしたからでした。主人公は妻に、「家事は俺と娘でなんとかするから大丈夫!」と“いい夫”ぶっていましたが、娘にだけ手伝わせて、息子には何もさせなかったところも違和感がありました。

【びばるさん】しかも主人公は、「俺は家族のためにこんなに頑張ってるのに、仕事が忙しいときに倒れるなんて!」と腹を立てているんですよね。口には出さないですが、これまでの生活で妻はその本心を見抜いています。「子どもには、この父親のもとで育ってほしくない」という憤りも含め、妻の中では夫婦関係はすでに修復不可能なところまで来ていたんです。

──本作は、妻に離婚届を突きつけられた主人公が過去にループしながら、自らの過ちに気付いていくストーリーです。今後はどのような展開になるのでしょうか。

【びばるさん】主人公のモラハラは、彼の性格だけではなく、その親世代の影響を大きく受けています。現代の夫婦問題をテーマにする上で、その背景にどんな価値観や環境があったかは欠かせないので、今後は夫婦それぞれの過去にさらに遡っていきたいと考えています。

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