【宜野湾】英語圏で「first penguin(最初のペンギン)」は開拓者を指す。両目がほとんど見えない森山菜々美さん(18)は今春、地元の宮崎県で12年間通った視覚支援学校を卒業後、沖縄国際大学(宜野湾市)に入学した。重度の弱視の学生が一般大学に入るのは、同支援学校としては森山さんが初めて。「最初のペンギン」は白杖(はくじょう)を手に泳ぎ始めた。(中部報道部・平島夏実)

ヘルパーの支援を得て1人暮らしをする予定の森山菜々美さん=4月30日、宜野湾市の沖縄国際大学

 群れの中で真っ先に海へ飛び込むペンギン(ファーストペンギン)は、シャチやアザラシに襲われるかもしれないが、魚を捕らえるために必要とされる。

 「このままだと、社会に出た時に困りそう」。森山さんは支援学校にとどまるのをためらった。学校全体の児童生徒数は約20人で、小学生の時からほぼ同じメンバー。家族のような安心感があるが、新しく友だちを作ったり敬語に慣れたりするのは難しい。将来の進路がはり・きゅう師や指圧師に限られるのも、心の中で引っかかっていた。

 一般大学に行ってみたい-。まずは出身地の宮崎県内で探したが、受け入れ実績がないと断られた。九州各地に広げてもやんわり断られ続け、行き着いたのが母の綾乃さん(42)のふるさと、沖縄の沖縄国際大学だった。

 沖国大には、教科書や授業の資料をあらかじめ点字に翻訳しておく担当者がいる。視覚障がいのある学生の場合、テストの制限時間は通常の1・5倍。点字盤を使い、紙に点字を打ち込んで回答するのは筆記よりも時間がかかる点に配慮している。

 「でも、大学から帰ったらぐったりする。支援学校ではやっぱり、守られていたんだな」

 校舎と校舎を結ぶ通路には点字ブロックがあるが校舎内にはないため、教室の配置を覚えるまでは壁を伝うしかない。ドアの前に置かれた消毒液に気づけない。数百人が集まるガヤガヤした空間では、話しかけられているのが自分なのかどうか不安になる。

 授業中、教員がパワーポイントを使って「これ」「それ」「あれ」と言うたび、「どれ」と聞きたくなる。英語のリスニングは、聞き取れていても点字でのメモが追いつかず、回答が間に合わない。教科書によっては絵や図が多くてよく分からない。

 飛び込んだ先の大学生活は荒波続きだが、森山さんは「自分ができる方法でやっていくしかないのかな」。両目の腫瘍が原因で視力を失った過去は「子どもの時は恨んだこともあったけど、今はないです。状況が変わるわけじゃないから」と言葉を継ぐ。

 「とにかく慣れるのに必死。でも、後悔はしてない。最初のペンギンでいたいって今も思っています」。

(写図説明)ヘルパーの支援を得て1人暮らしをする予定の森山菜々美さん=4月30日、宜野湾市の沖縄国際大学