診療報酬約370万円をだまし取った詐欺と院内スタッフへの強制わいせつの罪に問われた沖縄市の産婦人科医院「あいレディースクリニック」院長の男性医師(53)に懲役3年、執行猶予4年の有罪判決が下された。本紙の取材では、この医師が帝王切開手術でミスを繰り返し、県医師会が指導していたことも判明。事件を契機として患者はいかに医師を選ぶか、国は制度的に医療の質をどう保証していくべきかも問われる。(社会部・城間陽介)

(資料写真)病院

 「CMやテレビでの特集を見て安心して産むことができる医院と思って…」

 あいレディースクリニックで子ども2人を出産した本島北部在住の30代の元患者は、同院を選んだ理由の一つに広告や同院のしゃれた内外装に好感が持てたからと話した。医師に言われるまま、毎日通院し「良く分からない」点滴を打って、出産一時金とは別に1人約50万円を支払った。

 別の中部在住の元患者も広告のイメージなどで同院を受診したが、高額請求や院長の対応に不信を募らせ転院した。

 昨年10月に男性医師が逮捕されて以降、本紙に続々と元患者から被害やその懸念を訴える声が寄せられた。内容を聞くと、多くが裁判で問われた罪名の類いではなく、果たして適切な医療措置が取られていたのかという疑念だった。

 取材を進めると、この男性医師が開業以降の約10年間で帝王切開時にミスを繰り返していたことが分かった。事情を知る産婦人科医の一人は「(手術ミスなどの)被害患者をたくさん見てきた。病院を選んだ患者の責任だと納得しようとしたが、それでも引っかかってこの10年間ずっと悩んできた」と打ち明けた。

 そして「消費者保護法は存在するが、患者保護法というのは存在しない。誰が悪徳医師から患者を守ってくれるのか」と問う。

 日本医師会は医療ミスを繰り返す問題の医師を「リピーター」指定し、改善指導するよう各都道府県医師会に通知する。ただ“指導”がどこまで実効性を担保するかは不透明だ。また、リピーター医師が誰であるかは「医師会内で極秘扱い」(医師会関係者)で、一般に知られることはない。患者はそれと知らずに受診し、被害に遭った場合も賠償金で決着し、公になることはほとんどない。

 あるベテラン産婦人科医は「医師だって優秀な人もいればそうでない人もいる。人気がある医師が優秀かといえば必ずしもそうでない場合もある。ブラックボックスと言われればそうだ」と内実を語る。

 「リピーター医師」(2005年、光文社新書)の著者で、多くの医療事件を手がけてきた東京弁護士会所属の貞友義典弁護士は、患者が身を守るすべとして(1)信頼できるホームドクターを持ち、良い医師を紹介してもらう(2)医療処置の説明を受け、疑問があれば必ず質問する-の2点を主に挙げる。

 その上で、現行の医師免許制度が一度取得すれば生涯有効で更新の必要がないことから、医師の質を確保・保証するものとなっていないと指摘。「国が責任を持って免許の運用を変えていくしかない」と強調した。