米軍嘉手納基地と普天間飛行場からの騒音被害を受ける住民らが合同で原告となり、国を訴える行政訴訟を那覇地裁に起こした。長年、爆音被害を放置した政府の不作為を追及する。

 異なる基地から騒音被害を受ける住民らによる合同訴訟は全国で初めて。

 嘉手納基地からの騒音被害訴訟は1982年の第1次から2000年第2次、11年第3次と続き、現在は第4次が係争中だ。普天間飛行場に関する騒音被害訴訟の第1次は02年で、12年、20年と3次にわたっている。

 こうした過去の訴訟はいずれも甚大な騒音被害が認められ国へ賠償命令が出た一方で、夜間・早朝などの飛行差し止めは実現しなかった。

 米軍の行為には国の支配が及ばないとする「第三者行為論」や、米軍機の運用は国際慣習法上、民事裁判権が免除されるとする「主権免除論」によって司法が訴えを退けたからだ。

 しかし住民が何より望むのは静かな普通の暮らしである。

 普天間飛行場は1996年に返還合意されたが、いまだに運用が続く。極東最大といわれる嘉手納基地は返還の議論すらない。そうした状況で基地周辺の住民が普通の暮らしを獲得するには、夜間・早朝などの飛行差し止めを実現するほかない。

 だが米軍機の爆音は全く改善されず、むしろ被害は深刻化している。今訴訟は現実の差し止めを勝ち取るため、住民らが県内で初めて挑む行政訴訟である。

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 訴えの柱は三つ。一つ目は住民らが米国相手に訴訟を起こすことができるという地位の確認だ。最高裁は2002年、対米訴訟での差し止め請求を主権免除論によって退けたが、これは日本と米国による新たな法整備で可能になりそれをしなかったのは国の不作為である-という主張だ。

 二つ目には、航空法の一部は米軍機にも適用されるとし、それをもって航行を制限しないのは国土交通相による裁量権の乱用とした。三つ目は、日米地位協定など日米の合意事項に国際民間航空条約で認められている飛行条件等の定めがないことを指摘。国民の基本権を保障する義務を果たしていないという。

 新たな法整備をはじめ国内法や国際条約を駆使すれば可能な米軍機の航行制限を、長年放置してきた政府の怠慢を糾弾している。

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 日米両政府は1996年、日米合同委員会で、嘉手納・普天間の両基地の近隣住民に対する爆音被害を軽減するための措置を定めた騒音防止協定に合意した。

 しかし実態はどうか。両基地の夜間・早朝の騒音発生回数は年々増加傾向だ。昨年、米海軍のオスプレイが嘉手納基地に初着陸した時刻は午後10時30分だった。例外規定を盾にした米軍機の運用で、同協定は空文化している。

 他国軍のやりたい放題を黙認する国は、とても主権国家とは言えない。政府や司法は、長年の騒音被害に向き合うべきだ。