女性受験者を差別的に扱った大学側の責任を厳しく批判した判決である。

 順天堂大医学部を受験した女性13人が、性別を理由に差別されたとして、大学側に計約5400万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は慰謝料を含む計約805万円の支払いを命じた。

 判決は、私立大も法に基づく公的な教育機関で、性差別を禁じた憲法14条を尊重する義務を負うと指摘した。

 女性受験者を性別のみで一律に不利益扱いする判定基準は「入試目的である医師の資質や学力の評価と直接の関係がなく合否を左右しており、不合理で差別的だ」と断じた。

 原告側は差別が認められた点は評価したが、慰謝料が受験1回当たり30万円にとどまったことについて「日本の司法は女性差別に鈍感」と批判した。

 医学部入試を巡っては2018年、東京医科大が女性受験者を一律に減点していたことが発覚した。文部科学省の緊急調査で、順天堂を含む10大学で、女性に不利な得点操作など「不正入試」が行われていたことが分かった。

 調査した81校の中で、男女間格差が最大だったのが順天堂大である。13~18年度の男性の合格率は女性の1・67倍だった。翌年度、男女の合格率は逆転している。

 男女同一の基準だったら、1次試験に合格していたことが判明している原告もいる。

 原告の一人は「医師を志した受験生が道を閉ざされ、泣く泣く別の人生を歩んだということを忘れないでほしい」と訴えた。

 医療の道を志す若者の夢を奪ったことを、大学側は重く受け止めるべきだ。

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 女性合格者抑制の背景に、日本の医師の働き方の問題が指摘される。

 「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティー(活動)が下がる」。東京医科大は女性差別の理由をこう言ってのけた。

 医学部の入試には、将来の働き手を獲得する狙いがある。過酷な労働環境の中、男性が重宝され、出産や育児で勤務を制限せざるを得ない女性は排除の対象になりやすい。

 環境を整備すれば女性が子育て中も働けるが、環境整備には費用や手間がかかる。

 先進国では、医師の半数またはそれ以上を女性が占めることが珍しくない。

 日本の女性医師は全体のわずか2割にとどまる。

 ほかの先進国にできて、日本にできないのはなぜか。

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 日本のジェンダーギャップ(男女格差)指数は156カ国中120位で、先進7カ国で最下位だ。

 日本は、女性が子育ての中心を担うべきだという風潮が強く、長時間労働が常態化しており、医療界に限らず、女性が働きづらい社会である。

 政府が掲げる「女性活躍」どころか、「女性に活躍させない社会」になっていないか。

 医学部の女性差別問題は、入試にとどまらず、社会全体の意識改革や働き方など、根本的な改善を日本社会に突き付けている。