国民民主党の幹部がツイッターで、ロシア語表記の道路標識を「問題だ」と投稿したことに非難が続出している。

 批判の拡大を受け、ツイートは削除されたが、ロシア人への差別感情やヘイトスピーチを助長しかねない危うい発言だ。

 投稿したのは同党の大塚耕平政調会長。北海道内とみられる道路標識の画像を添付し、「ロシアの現状に鑑み、道内の道路標識にロシア語表記があることは問題だと思う。なぜこうなったのか調べる」と書き込んでいた。

 ロシアのウクライナ侵攻以降、日本で暮らすロシア人へ「国へ帰れ」「犯罪民族は日本に来るな」といったヘイトスピーチや嫌がらせが横行している。

 そればかりか、ロシア語やロシア文化を排除・排斥しようとの動きも目立つ。

 表記を巡ってはJR東日本が、東京・恵比寿駅にあるロシア語の案内表示を紙で覆い隠し、問題となったばかりだ。後に元に戻し「差別との誤解を招く行為で不適切だった」と謝罪した。

 日本に暮らすロシア人は9千人余り。「ロシアたたき」や「ロシア排除」の広がりに不安な日々が続いているのではないか。

 ロシアのウクライナ侵攻は国際法や国連憲章に反するもので絶対に容認できない。無差別の砲撃や空爆には怒りがふつふつと湧いてくる。

 しかしだからといって責任を負う立場にない一般のロシア人へ、憎悪の感情をぶつける行為に正当性はない。人権侵害の深刻化を懸念する。

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 戦争を始めた国や指導者などに対する怒りが、直接責任のない特定の集団に向けられる。危機のたびに起きてきた負の歴史だ。

 1923年の関東大震災ではデマが流れ、在日朝鮮人らが殺害された。第2次大戦では、米国で日系人が「敵性外国人」とされ強制収容された。沖縄戦では、日本兵が住民を「スパイ容疑」で殺害するという事件が各地で起きた。

 在日ロシア人への嫌がらせが相次いでいることを受け、林芳正外相は「ロシア人であるという理由だけで排斥したり、誹謗(ひぼう)中傷したりしないよう」にと呼びかけた。

 2016年に施行されたヘイトスピーチ解消法は、国外出身者への差別的言動を「許されない」と宣言。差別解消に向けた施策の実施を国の責務としている。

 歴史を繰り返さないためにも、政府はもっと強いメッセージを発信すべきだ。

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 侵攻を巡っては在日ロシア人からも反戦を訴える声が上がる。デモ参加者の中には「外の世界を知る自分たちが声を上げなければ」と覚悟をにじませる人もいる。

 一方でロシア排除の動きは、ロシア料理店への嫌がらせやロシア文学関連パネル展の延期など、身近なところにも広がっている。

 だからこそ今、政府間関係とは別に、市民レベルで対話や交流を継続していくことが重要となる。築いてきた友情や信頼を守るためにも、理不尽で卑劣な差別は許さないとの意思を示したい。