本書は県立中部病院におけるハワイ大学医学部との提携による卒後医学臨床研修制度が50年を経過した節目にあたり、研修修了生の動向を追跡した記録である。現在も全国から注目されているアメリカンスタイルの制度を立ち上げ、支え、関わった多くの人々について、膨大な数の資料をまとめて、記録した。著者自身も中部病院の研修を経験し、さらに指導医となり、現在ではハワイ大学の側から関わっている。各地から来る中部病院の研修制度の見学者は多い。その際に紹介する資料がなく苦労した著者は、年余にわたる資料の収集に努力し、本書を著した。

良医の水脈 沖縄県立中部病院の群像(ボーダーインク・1944円)

 この50年間に中部病院で初期研修を受けたものは1076人になるという。全国各地の大学を卒業して沖縄に来た研修修了生の55%は県内の医療に携わり、残りは再び全国津々浦々へ赴き活躍していることが明らかになった。研究者(大学教授17人)はじめ管理職や医療行政職など、活躍分野は多岐にわたる。著者は多くの研修医の一人一人に、思い出と親しみを込めて描出し、熱いメッセージを送っている。

 本書は単なる歴史的記述のみではなく、著者自身の回想録でもあり、読む人の心に響くものがある。「良医」とは何ぞや? と問うまでもなく、研修修了生の動向と活躍の現状を知ればおのずと答えが読み取れる。中部病院の卒後医学臨床研修制度に「源泉」を持つ「良医の水脈」は脈々と流れて大きな川となり、大海(外国)ともつながっている。

 さらに中部病院の研修制度を修了した医師が県内各地の病院に勤務し、あるいは保健行政職や管理職で活躍して、沖縄の医療を支えてきた歴史的事実が記載された貴重な資料でもある。また本書のところどころに組まれたコラムは、著者の知識の広さと巧みな文章につられて一気に読めて面白い。

 本書は中部病院研修医同窓会員や関係者必読の書であると同時に、医療を受ける側にとっても「良医」とはどのような医者を指すのか、その良医が生まれる仕組みの一端をうかがい知るためにも、多くの県民に薦めたい本である。(知念正雄・ちねん小児科院長)

 【著者プロフィール】あしみね・かおる 1967年鳥取大卒。75年県立中部病院小児科医長。ハワイ大医学部小児科、琉球大医学部小児科で臨床教授を経て、2003年中部病院院長。那覇病院、南部医療センター・こども医療センター院長を歴任