バイデン米政権が主導する新たな経済圏「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が発足した。日米豪印や東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の一部など計13カ国が参加している。

 IPEFは従来型の貿易協定と異なり、国境を越えるデータ流通などを含む「貿易」や半導体などの「供給網の強靱化(きょうじんか)」、「クリーンエネルギー・脱炭素・インフラ」、課税逃れを防ぐ「税制・反汚職」の4分野ごとに参加国を募る。

 一方で当初から関税引き下げなどは議題としない仕組みだ。

 背景には、11月に中間選挙を控える米国の国内事情がある。バイデン政権は、市場開放した場合の雇用への悪影響を懸念し、本格的な通商交渉には容易に応じられない。

 このため、環太平洋連携協定(TPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)のような関税引き下げを伴う交渉は難しい。一方で中国は、これらの協定を通じ地域経済の主導権を狙っている。IPEFは、米国の国内事情を踏まえつつ中国に対抗する「対中包囲網」の一環とみられている。

 米国という巨大市場への参入機会の拡大につながらないため、米国以外の参加国にはTPPやRCEPほどのメリットはないとされる。参加国に広がりを欠き、実効性に疑問符がつく。

 自国の内政事情を優先し、国際協定への参加を回避し、新たな枠組みで友好国を「囲い込む」やり方がどのような結果を生むのか。

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 第2次世界大戦前、主要国が自国と友好国や植民地との間で「ブロック経済」を形成し、保護貿易が横行したことが戦争の起きた一因だと考えられている。

 IPEFは保護貿易のための仕組みではないが、戦後の反省から自由な経済活動を基本としてきた現在の国際経済に見えない壁をつくりかねない危うさをはらむ。

 IPEF参加の日米豪印はその後、4カ国による協力枠組み「クアッド」でインフラ整備支援でも合意した。

 今後5年間にインド太平洋地域で500億ドル(約6兆3800億円)以上の支援や投資を目指す。特定の国にくみしないインドの立場に配慮し共同文書では名指しは避けているが、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する形でつくられたことは否定できない。

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 本年度スタートした「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」(6次振計)には「アジアとの共生」「アジアのダイナミズムを取り込む」などの表現が盛り込まれている。政府は「骨太の方針」で沖縄を日本経済成長の牽引役(けんいんやく)と位置づけている。

 アジアは世界経済成長の要でもある。ここで政治的動向により積極的に経済活動ができる国とそうでない国が生まれるなら、大きな損失となりかねない。

 IPEFのような「囲い込み」ともなりかねない動きが、沖縄経済にどのような影響を与えるのか、慎重に見極める必要がある。