ナチス・ドイツが第2次世界大戦で敗れたのは1945年5月8日。戦後ドイツは自らの加害責任と徹底的に向き合い、謝罪と和解の道を歩む

▼85年のこの日、当時西ドイツの大統領だったヴァイツゼッカー氏は「荒れ野の40年」と題した演説で自問する。600万人ともいわれるユダヤ人虐殺など、ナチスの蛮行に国民の多くが「良心を麻痺(まひ)させ」「目を背け」「沈黙」した責任を問うた

▼この姿勢がかつて侵略した国の信頼を生む。長年敵対したフランスとは、共同で共通の歴史教科書を作った

▼デンマークの映画監督サントフリート氏は2015年、「ヒトラーの忘れもの」を制作。戦後、地雷200万個の撤去を捕虜のドイツ少年兵に強要し、千人以上の若者が命や手足を失った負の歴史を自国民に知らしめた。非人道的行為はナチスだけでなかったとの自戒を込め

▼日本は、韓国の日本総領事館前に設置された「慰安婦」を象徴する少女像の撤去を韓国政府に求めている。いたずらに反発するのではなく、冷静に振り返りたい。日本は本当に謝罪したのか。それは届いているか

▼2月に95歳の元ナチス党員を裁判にかけるなど、今もドイツは過去を自ら追及する手を緩めない。「10億円を払ったのだから蒸し返すな」と迫る日本とは、「過去の克服」を目指す態度が決定的に違う。(磯野直)