本書は青山学院大学に元首相の鳩山由紀夫氏をはじめ駐米大使や駐日の中国や韓国大使などそうそうたるメンバーを迎えて行われた全15回の講義集だ。サブタイトルは「戦争をさけるために」。ヨーロッパでは独仏の和解が進み、70年以上平和が続いている。戦争に訴えて問題解決を図る国はない。石炭、鉄鋼などの争いの原因を一つ一つ除去する努力を続けてきたからだ。ではアジアではどうか。日中韓の協力が真剣になされれば平和は可能であろう。

アジアの地域統合を考える(明石書店・3024円)

 ASEAN前事務局長のスリン・ピッツワン氏の発言に注目したい。「大きな国家から始まり、小さな国を引き込んでいったヨーロッパと違い、ASEANの場合は中小規模の国が中国、日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、ロシア、EU(欧州連合)を対話パートナーの中に引き入れていき、この地域におけるパワー・プレイの支え」となった、と語る。

 元文化庁長官の青木保氏は「この地域はなんと言っても、文化の多様性っていうものが世界でもっとも顕著に見られるところ」と指摘する。料理やファッション、アニメ、ドラマ、ゲームにもはや国籍はない。東アジアの文化的な繁栄は既に花開いている。

 問題は政治だ。北朝鮮の核の脅威をひそかに喜び、原子力・軍需産業の拡張を狙う「ムラ」が存在する。東アジアの発展が、こうした闇に覆われてはならない。

 この講座は一般財団法人ワンアジア財団の寄付によるもので、財団は名前の通り、アジア共同体の創成に寄与することを目的としている。これまでに世界31カ国(地域)で展開、準備中のものを含めれば日中韓の300以上の大学で講座を提供する。知的共同体が構築されつつある。

 鳩山氏は「東アジア共同体を構想する時の中心をむしろ沖縄に置くことを考えたらどうか」と提案した。軍事ではなく平和の要石として沖縄を位置付ける。解決の鍵がこの本にある。(緒方修・東アジア共同体研究所琉球・沖縄センター長)

 【著者プロフィール】はば・くみこ 青山学院大教授▽本書掲載の講演者は鳩山由紀夫、藤崎一郎、程永華、天児慧、申珏秀、李鍾元、伊藤憲一、明石康、鄭俊坤、青木保、ジョセフ・ナイ、スリン・ピッツワン、趙全勝、北岡伸一、パク・チョルヒ