オリジナルアルバム「SOFTLY」をリリースする山下達郎(提供)

 世界的に再評価の機運が高まる「シティポップ」を代表するアーティスト山下達郎が、11年ぶりのオリジナルアルバム「SOFTLY」の発売を前に沖縄タイムスの単独インタビューに応じた。さらに、山下が在籍したシュガー・ベイブをシティポップの“始祖”と位置付け、山下をシティポップの“最重要人物”と指摘する栗本斉(「『シティポップの基本』がこの100枚でわかる!」著者)がレビューを寄せた。(東京報道部・照屋剛志)

 【東京】22日に発売する11年ぶりのオリジナルアルバム「SOFTLY」について、山下達郎は「時間をかけ、試行錯誤して作り上げた。聴き手それぞれの感性で楽しんでほしい」と呼びかけ、11日から始まった全国ツアーの最終地に沖縄を選んだことに「リゾートのイメージもあるが、沖縄が歩んだ独自の歴史も大切にしたい」と語る。

 アルバムのタイトル「SOFTLY」には「動乱の時代を、音楽で優しく柔らかく包み込みたい」との思いを込めた。収録は全15曲。映画「未来のミライ」のオープニングテーマとなる「ミライのテーマ」、エンディングテーマの「うたのきしゃ」のほか、映画やテレビドラマの主題歌、CMソングなどの力作が並ぶ。

 CDだけでなく、アナログ・レコード、カセットテープもそろえた。自身はレコード派という山下は「時代によって聴き方も変わる。好きなスタイルで聴いてほしい」。CDの初回盤には「PAPER DOLL」「パレード」などのライブ音源7曲も収録されている。

 ジャケットは漫画「テルマエ・ロマエ」で人気のヤマザキマリが手がけた山下自身の肖像画。イタリアフィレンツェで油絵を学んだヤマザキに自ら頼んだといい「本物の絵はもっとすごいよ」と笑う。

 ライブツアーは11日の東京を皮切りに24都市で47公演を展開予定。最終地の沖縄では11月20、22日、那覇文化芸術劇場なはーとで開催する。

 「高気圧ガール」など数々の沖縄キャンペーンソングを手がけてきたこともあり、「沖縄は身近な存在」とする。「琉球王国から続く歴史や文化、沖縄戦や日本復帰などの経験も重く受け止めている。独特な思いがある」と語った。

 今後の音楽活動について、来年は70歳の節目を迎えるとし、「自分のやりたいことをやるだけ。できる限り現役を続けていきたい」と話した。

詳しくはオフィシャルサイトから https://www.tatsuro.co.jp/

王道とアップデートに絶妙さ

■栗本斉 「SOFTLY」レビュー

ヤマザキマリが手がけたオリジナルアルバム「SOFTLY」のジャケット

 待望。その言葉がこれほど似合う作品はあっただろうか。「SOFTLY」は、11年ぶりに届けられた山下達郎の新作である。もちろん、この11年の間には新曲を届けてくれていたし、コロナ禍になるまでは毎年のようにコンサートツアーも行っていた。でもやはり、彼の音楽はアルバムという形でじっくりと聴きたい。

 そして期待にたがわず、「SOFTLY」は、あの伸びやかな歌声をたっぷりと堪能できる傑作に仕上がっている。トレードマークの一つであるアカペラのコーラスで幕を開け、現代的なダンスサウンドの「LOVE’S ON FIRE」から、軽快な映画「未来のミライ」の主題歌「ミライのテーマ」へとなだれ込む。「CHEER UP! THE SUMMER」や「LEHUA’ MY LOVE」などは、これからの季節にドライブしながら聴きたいサマーソングの決定版と言ってもいいだろう。熱唱する「YOU(ユー)」には思わず心を動かされるし、英語で歌う「ANGEL OF THE LIGHT」のコーラスワークには思わずほれぼれする。ラストの「REBORN(リボーン)」を聴けば誰しも、彼の歌の表現力と説得力に圧倒されるだろう。

 山下達郎ほどのキャリアがあれば、マンネリと言われてもおかしくはない。その半面、新しいことをしようとすれば、どこか無理に感じることもある。しかし、本作では王道の“達郎節”を聴かせてファンを安心させると同時に、プログラミングされたリズムやシンセサイザーの音色などに流行のサウンドを取り入れてアップデートされている。そのあたりのさじ加減も絶妙だ。

 また、彼なりの社会派メッセージが盛り込まれているのも特徴である。その顕著な例が、「OPPRESSION BLUES(弾圧のブルース)」だ。世界中で起こっている紛争や圧政に対するメッセージソングで、「どうして? 何も、出来ないの?」と問いかける。

 「夏だ! 海だ! タツローだ!」なんていうキャッチコピーとともに耳に心地よいポップスを歌うスタイルは健在ながら、50年近いミュージシャン人生で培った深みや奥行きを感じさせる楽曲群。まさに、日本のポップスの金字塔と言える傑作である。

(音楽と旅のライター・選曲家)