岸田文雄首相が、感染症対策を一元的に担う「内閣感染症危機管理庁」と、米疾病対策センター(CDC)をモデルとした専門家組織「日本版CDC」の創設を打ち出した。

 政府の新型コロナウイルス対応を検証してきた有識者会議の報告を踏まえた、司令塔機能の強化だ。

 背景には、検査や医療体制などの対策で後手に回ったとの批判がある。

 感染症の危機管理を担う組織の必要性は2009年の新型インフルエンザ流行時から課題として挙げられてきた。

 新型コロナを含む次の大流行に備えた司令塔の強化に異論はない。ただ本当の意味で独立性を保ち指導力を持った組織ができるかといえば、全体像はぼんやりとしている。

 政府が司令塔に位置付ける危機管理庁は内閣官房に設けられ、首相の下で感染症対策の企画立案や総合調整を行うという。

 これまで新型コロナ対応の担当部署は複数の省庁にまたがり、指揮系統のあいまいさと縦割りの弊害が指摘されてきた。

 ワクチンを巡っても入手交渉や輸送、保管、医療従事者の確保、接種記録などで、厚生労働省や総務省、自治体との連携に問題が生じたことは記憶に新しい。

 危機管理庁創設は、あいまいだった司令塔機能を一元化しようというものだ。しかし独立した省庁でもなく、感染急拡大の有事に関係省庁から職員を集める計画には、「どこまで機能するのか」といった不安が付きまとう。

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 日本版CDCは専門家組織の一元化が狙いで、厚労省の下に国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合する形で設立するという。疫学調査から臨床研究まで担い、科学的知見の収集や発信まで幅広い役割が期待されている。

 参考とする米疾病対策センター(CDC)は、米国民の健康を担う司令塔で、約1万5千人ものスタッフを抱える巨大組織だ。感染症対策では機能、能力とも世界最高峰とされ、政策決定の材料となる科学的根拠を提供している。

 日本のコロナ対応は、複数の専門家組織を内閣官房や厚労省の下に設置。役割や責任が不明確とされたほか、調査研究も研究者個人に頼っていたため限界があった。

 注目される日本版CDCだが、組織をつくっただけでは機能しない。

 最も重要なのは政府からの独立性と権限の付与である。

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 新組織の設置は政府のコロナ検証会議の議論が土台となっている。

 しかし「生煮え感」が拭えないのは、約2年半のコロナとの闘いをわずか1カ月で総括した検証そのものの不十分さと、間近に迫る参院選のアピール材料にしたいとの考えが透けて見えるからではないか。

 組織改編ばかりが先行し、どこまで改善できるのか、肝心の部分が見えてこない。

 財源をどう確保するのか、どのような陣容で、いつスタートするのか、具体的中身を示すべきだ。