史上初めて核兵器を全面的に禁止する「核兵器禁止条約」の第1回締約国会議が、きょうオーストリアの首都ウィーンで開幕する。

 核廃絶や核実験で被害を受けた「ヒバクシャ」救済の行動計画をまとめるほか、核軍拡加速に警鐘を鳴らす政治声明を採択する見通しという。

 核を巡る国際情勢が厳しさを増す中、条約の意義は一層高まっている。核軍縮への動きを再構築する場とすべきだ。

 昨年1月の条約発効を受けて開かれる初めての会議。ただ高揚感というよりは緊張感に包まれている。ウクライナを侵攻したロシアのプーチン大統領が核兵器使用をちらつかせ、公然と威嚇するなど、その脅威が高まっているからだ。核大国がこれほどあからさまに核使用を語るのは、異常と言うほかない。

 東アジアでは中国が核弾頭の保有数を増やし、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮は核実験準備の「最終段階」に入ったとされる。

 5月には国連の安全保障理事会で、北朝鮮のミサイル実験に制裁を科す決議案が、中ロの拒否権行使で否決された。かつてない事態である。

 懸念されるのはウクライナ危機を機に、国内でも自民党などから「核共有」の声が上がっていることだ。

 「核の傘」の強化、南西諸島を「ミサイル要塞(ようさい)化」にといった空気は抑止力を高めるよりもむしろ、他国の軍拡を招く「安全保障のジレンマ」に陥り、この地域の不安定化を一層加速させかねない。

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 核軍縮の停滞に不満を募らせたオーストリアやメキシコなど非核保有国が推進し、発効した核禁条約は、人類が目指すべき核廃絶を制度化する画期的な国際法だ。

 広島、長崎の非人道的被害を踏まえて核兵器を違法化した条約で、制定の大きな力となったのが被爆者らの取り組みだった。批准国は62カ国・地域を数える。

 日本と同じく米国の「核の傘」の下にいるドイツやノルウェーなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国もオブザーバー参加する。

 しかし唯一の戦争被爆国である日本政府は批准もせず、オブザーバー参加さえ見送った。反対する米国との同盟を重視したからだという。

 核保有国と非保有国の橋渡し役を自任する日本の本気度が疑われる事態だ。戦争被爆国がオブザーバー参加さえ見送ったことは、締約国の不信感を招きかねない。

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 会議に先立ち開かれた関連イベントで、長崎で被爆した82歳の男性が「核兵器は非人道的な絶対悪。条約は被爆者の願いそのもの」と語った。

 核兵器そのものが悪なのだという国際的規範を高め、軍縮への流れを取り戻す契機にしなければならない。

 核兵器保有国の核軍縮義務をうたった核拡散防止条約(NPT)も、核大国のエゴによって崩壊の危機に直面している。 

 8月に開かれるNPT再検討会議を前進させるためにも、核軍縮を求める国際世論を喚起し、歴史的な第1回会議を成功させてほしい。