てびちそば

Tokyo沖縄めし(7)みやら製麺 東京都台東区上野 

東京メトロ千代田線に乗り、湯島駅の6番出口から目と鼻の先だ。通りに「八重山そば」ののぼりが立ち、軒先に「自家製麺 八重山そば みやら製麺」の文字。昼休み時間ともなると、近くの会社員らで行列ができるほどの人気店だ。

店内に入る。食券販売機で品定め。八重山そば、ソーキそば、肉やさいそば、てびちそば、あーさそばがあり、それぞれ単品とセット、大盛りがある。

あくまでもそば一本で勝負する、この潔さ。都内には沖縄料理を提供する多くの店が、南国亜熱帯の味を競い合う。沖縄料理だけではない。和洋中、さまざまなグルメが都民の胃袋を満たしてくれる。そんな東京で八重山そば一筋。これはもう食べる前からうまいに違いないと推測する。前から気になっていた「てびちそば(大)ランチセット」でがっぷり四つといこう。

しばらくして目の前に現れたのがこれだ。

 
 

あきさみよー。うり、そばがほとんど見えない。てびち(豚足)が中央にそそり立ち、肉がたっぷりついた骨が回りを固める。この武骨なたたずまい。思わず喝采したくなる。まずはてびちから食べないとね。そばが出てこないのよ。

てびちはプルプル。コラーゲンどーん。よく煮込まれ柔らかくてうまい。ひとかみするごとに、ひざ軟骨が喜んでいるかのようだ。肉付きの骨は、沖縄だと骨汁として提供されるものだと思うが、骨回りの肉って、なんでこんなにうまいのだろう。

 

そばは自家製。八重山そばと言えば、丸い麺が定番だと思われがちだが、みやら製麺の場合は、平細麺といったほうがいいか。

店主の宮良隆生さん(石垣市出身)が幼い頃、近くの「あさひ食堂」という店の八重山そばは平細麺だった。八重山そばの店を出すにあたってイメージしたのは、そんな幼い日々の記憶なのだ。

前列右が宮良隆生さん

宮良さんは、高校卒業後、岐阜県などで料理人として修業を積み沖縄料理を提供してきた。2016年から東京都神田で「みやら製麺」を開業し、2年後、いまの場所に移転した。

早いときは朝4時半から仕込みだ。そばの命とも言えるスープは毎日作る。豚の背骨部分を臭みが出さないために丹念に洗い、煮立たせないようにじっくり時間をかける。「ゆっくりと出汁をとるのが沖縄の料理の基本。煮立たせるとスープが濁ってしまう」。スープが余ってもその日で捨ててしまうという。それ以外にももちろん、ソーキ(豚のあばら骨)やてびちも仕込み、その合間に麺を打つ。気を抜く間はない。

てびちそばの骨は、出汁をとったときの背骨だ。そのまま捨てるには惜しいと思い、てびちと一緒に提供している。その判断は正しい。麺をすすると、豚とかつおの出汁の薫りが体を包む。丁寧な仕事のあかしである。スープの深い味わいが五臓六腑に染みわたる。

 

ジューシーはそばに比べれば、控えめだが、いい味出している。

 

完食。残ったのは宴のあとの骨。思い残すことなし。満足満足。ありがとうございます。みやら製麺さん。クヮッチーサビタン。

ほかにもソーキそばはこんな感じです。

 

ソーキは柔らかく、味もしっかりしている。ソーキの軟骨のとろとろ感は圧力鍋で出す。これもあまり長くは煮込まないように注意している。煮込みすぎると型崩れするという。

 

八重山地元の香辛料「ヒバーチ」やコーレーグスーで味変すると、これまた違う味わいが楽しめる。

宮良さんはいつか、そばとかき氷(沖縄風の冷たいぜんざい)を提供する店を出したいと夢を抱いている。「子どものころの沖縄の食堂といえば、どこもそばとぜんざいを売っていた。ほっとする組み合わせだと思う」と話した。

〈メモ〉
自家製麺 八重山そば みやら製麺
〒110-0005 東京都台東区上野1-2-8
Tel 03-5577-6622
営業は現在ランチのみ 11:30~15:00(日曜休み)
火曜日はキッチンカーも出している。