沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須の鉱山開発を巡り、県が総務省の公害等調整委員会(公調委)が示した和解案に合意した。採掘業者はすでに合意の考えを示しており、早ければ8月末にも採掘が可能になる。

 戦没者の遺骨が含まれる可能性のある土砂の採掘に懸念の声が上がっている。県は、業者が開発を始める前に遺骨の有無を確認させる措置命令を出したが、業者は不服として、命令を取り消す裁定を公調委に求めていた。

 和解案は(1)工事で遺骨が発見されたときは、周辺半径5メートルの範囲で工事を2週間中止し、戦没者遺骨収集情報センターなどによる調査や収集をさせること(2)採掘完了部分は埋め戻し、ガジュマルを植栽すること-などを条件としている。

 県は和解案が「措置命令の内容をおおむね反映している」と判断した。

 しかし沖縄戦の激戦地だった本島南部の遺骨は粉々になって埋もれ、専門家でも見つけることは難しい。和解案が示す条件で遺骨が取り除かれるのか実効性は不透明だ。

 加えて、措置命令で規定されていた採掘開始前の遺骨の有無の確認と報告、事前協議は求めておらず、仮に業者に違反があった場合でも中止命令を出せなくなる。

 一帯では昨年3月現在、この業者のほかに2件の鉱山開発と、19件の事業について届け出があった。懸念を残したままの合意は問題を先送りにしたに過ぎない。

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 戦跡として唯一の沖縄戦跡国定公園は「戦争の悲惨さ、平和の尊さを認識し、戦没者のみ霊を慰める」目的で自然景観の保護を定める。公園内には数々の慰霊塔が立ち、県平和祈念公園もある。

 県は独自の条例制定での保全も検討するが、議論は停滞したままだ。自然公園法上の特別保護地区の拡大により乱開発を防ぐなど抜本的な対策を急ぐべきだ。

 本島南部の土砂使用を巡っては、名護市辺野古の新基地建設にも使用される可能性が浮上している。国は埋め立て設計変更の中で、新たに県内9市町村での土砂採取を申請。最も多く採取可能とされたのが南部地区だった。

 南部の土砂が基地建設に使われる可能性について岸田文雄首相は「県民の気持ちを受け止め判断されるものと思う」と述べたが、使用の可否には触れなかった。岸田首相は遺骨が含まれる可能性のある土砂は使わないと、はっきり示すべきだ。

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 沖縄戦の戦没者の遺骨を含む可能性がある土砂を、埋め立てに使用しないよう求める意見書は、全国の地方議会でも相次いで可決されている。沖縄を含む29都道府県で、少なくとも132の地方議会が可決した。

 戦後77年がたっても本島南部を中心に少なくとも2700柱が未収骨とされている。遺骨を含む土砂を新基地建設に使用することは、戦争犠牲者や県民を冒涜(ぼうとく)するあり得ない判断だ。

 来る参院選では、使用を認めるかどうかについても各候補者に問いたい。