岸田文雄首相は、政治的に重要な意味を持つ発言を公式の場で3回も繰り返した。

 復帰50年決議を採択した4月28日の衆院本会議。岸田首相は行政府の長として「基地負担軽減の目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げていく」と決意を述べた。

 決議は基地負担軽減を「責務」と位置付けている。

 5月15日の復帰50周年記念式典。岸田氏はここでも「復帰から50年がたつ今もなお、沖縄の皆さまには、大きな基地負担を担っていただいています」と語り、基地負担の軽減に全力で取り組んでいくことを明らかにした。

 そして6月23日の沖縄全戦没者追悼式。首相として3年ぶりに追悼式に出席した岸田氏は、負担軽減問題についてほとんど同じ文言を使った。

 沖縄の基地負担軽減について、行政府と立法府の認識は基本的に一致している。

 玉城デニー知事も復帰50周年記念式典で「過重な基地負担」の解消を強く求めた。

 政府も国会も県も、負担軽減の必要性を認めながら、それが一向に進まないのはなぜか。何が負担軽減を妨げているのか。どうすれば前に進めることができるのか。

 復帰50年の参院選は、そのことを正面から問う機会にしてほしい。

 沖縄選挙区には5人が立候補しているが、辺野古に賛成か反対かの表層の議論ではなく、深く問題点をえぐる論戦を期待したい。

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 沖縄選挙区は「オール沖縄」勢力が推す現職の伊波洋一氏と、自民党公認・公明推薦の新人、古謝玄太氏による事実上一騎打ちの構図だ。

 辺野古移設について伊波氏は反対、古謝氏は容認の姿勢を示している。両氏の主張は、真っ向から対立する。

 その一方で、伊波氏は「一刻も早い普天間飛行場の閉鎖・返還」を主張し、古謝氏は「普天間飛行場の危険性除去は待ったなし」と強調する。

 普天間に関して似たような主張を掲げながら、しかし、辺野古を巡って大きな隔たりが生じるのはなぜか。

 設計変更による軟弱地盤の埋め立て工事について、それが一日も早い普天間の危険性除去につながるかどうかを有権者に分かりやすく語ってほしい。

 沖縄が強いられている基地の過重負担は、辺野古問題だけではない。

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 有機フッ素化合物による汚染問題は、健康に関わるだけに県民の関心が高いが、基地内調査は進んでいない。

 2004年、沖国大に米軍ヘリが墜落した時、米軍は警察やメディアの現場立ち入りを禁じた。米軍がその根拠として持ち出したのが地位協定の合意議事録である。

 外来機の飛来や基地外での訓練、夜間の騒音など、過重負担の事例を数え上げたら切りがない。

 その上、政府が防衛力の抜本的強化や「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」を進めたら沖縄はどうなるのか。議論すべきことは多い。