参院選では安全保障政策も重要な争点として浮上している。ロシアによるウクライナ侵攻を受け増え続ける死傷者、激しく破壊された街並みに、日本の安全保障への不安が国民の間に広がっている。

 自民党は、防衛費を対国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に置いた、5年以内の防衛予算の増額を公約に掲げた。敵基地攻撃能力は「反撃能力」と言い換えた上で「保有」を明記した。

 日本の防衛費は、2022年度当初予算で5兆4千億円に上る。防衛費をGDP2%に増やせば年10兆円を超え、米国、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国となる。

 日本維新の会が「積極防衛能力」を掲げ、GDP2%を目安にすると明示した。米国の核兵器を日米で共同運用する「核共有」の議論開始も主張する。国民民主党は「自衛のための打撃力(反撃力)」を整備するとの立場だ。

 巨額の財源の手当て、日米同盟下での役割分担など議論すべき課題は多い。

 その上、日本の防衛政策の基本である専守防衛を逸脱しかねない一足飛びの「防衛力強化」で、安定した平和が保てるとは思えない。対話や交流、さらに資源、食料の安定供給を図る多国間外交や経済協力強化も必要だ。

 防衛力への偏重は、軍拡競争を加速させ、地域を不安定化させる恐れもある。

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「平和の党」を自任する公明党は「予算額ありきではなく、真に必要な予算の確保を図る」と主張、連立政権を組む自民党と一線を画す。

 立憲民主党は「総額ありきではない」とし、「防衛力の質的向上」を図るとした。

 共産、社民両党は、軍事費の増額に反対。核兵器禁止条約への参加や、外交による平和実現を強調する。

 危機の時だからこそ、説得力のある政策を示せるかが、問われる。

 戦後日本は、政府開発援助など人道支援により国際社会で信頼を築いてきた。ウクライナのゼレンスキー大統領も、国会演説で、日本には軍事支援を求めなかった。

 23日に閉幕した核禁条約の第1回締約国会議で採択された「ウィーン宣言」では、核の非人道性を長年訴えてきた被爆者にも言及し「貢献を称賛する」とたたえた。

 平和国家として歩んできた針路が問われる選挙である。

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 広大な米軍基地に加えて、南西諸島への自衛隊の配備増強。米軍の訓練激化で、県民の基地負担は増している。

 一方、安保法制で住民保護は自治体の役割とされ、丸投げされた格好だ。東アジアで有事が起きれば、沖縄が攻撃対象になることへの危機感が、県民の間で広がっている。南西諸島の基地強化は抑止力を高めるよりもむしろ、他国の軍拡を招く「安全保障のジレンマ」に陥り、地域の不安定化を一層加速させかねない。

 力だけでは、平和は守れない。各党には、選挙戦を通じて外交を重視する総合的戦略を示すよう求めたい。