出版に本腰を入れる様になった時、企画として2本の柱を立てた。沖縄学の最新の知見をちゃんとした形で出そうとした『琉球弧叢書(そうしょ)』と、沖縄研究の古典を復刻で、という『沖縄学古典叢書』である。

沖縄学古典叢書3 琉球の陶器(榕樹書林・3670円)

 沖縄学古典叢書の第3弾として選んだのが『琉球の陶器』であった。実を言うとこの頃には沖縄研究の古典といわれている本の内、市場性があると思われるものの多くが既に復刻ないしは新版で出ていた。

 『琉球の陶器』は残された市場性のあると思われる数少ない本の1冊であった。復刻しても売れてくれなければ仕事としては成り立たないわけで、『琉球の陶器』は原装復刻という謳(うた)い文句にもうまく対応できる本だと思ったのである。『琉球の陶器』は民藝叢書の1冊で装幀(そうてい)は芹沢銈介、文章は柳宗悦の他、山里永吉、河井寛次郎、濱田庄司、比嘉景常といった錚錚(そうそう)たるメンバーで、内容の濃い美しい本である。原本の味を生かしたままで新しい本にするというのは何よりも費用が高く付く。それを開き直って、これでどうだ、と見栄(みえ)をきるのが素人出版の愚かさというもの。趣味的要求を満たすことには成功したと言っていい。

 刊行が1995年だから、この頃にはバブルも崩壊し、ヤチムンブームも一段落、今思えば出版の世界も退却局面に入っていたのである。

 だが改めて1942(昭和17)年に刊行された初版の『琉球の陶器』を手に取ると、それまでに刊行された琉球の陶器に関する最も総合的な研究書であり紹介の書でもあって、本書によって初めて琉球の焼き物は全国に知られることとなったのだということが、重みを持って伝わってくるのである。そして読んでも内容が全く古くないのである。

 『琉球の陶器』の復刻は、いい商売にはならなかったけれども満足感を満たしてくれた出版であった。(武石和実・榕樹書林代表)