沖縄県基地対策課は30日までに、米軍基地問題について、玉城デニー知事が有識者の意見を聞く第2回アドバイザリーボード会議の議事概要を公表した。国に緊張緩和の必要性を再認識させるためにも、有事の際に国民保護法の住民避難が非現実的なものになっており、具体的な議論が必要との声があった。(政経部・大城大輔)

沖縄県

 ある委員は「どこに住民避難の限界があるか、はっきりしないといけない。日本の今の勇ましい論議の一番の問題点は、被害想定が全くないことだ」と指摘。有事には離島や本島からの避難も想定しなければならず「戦争になったら終わりという共通認識を持つためにも、具体的な住民避難を考えなくてはならない」と警鐘を鳴らした。

 「県側から国に、住民保護の問題点を突き付けることで、戦争回避や緊張緩和の必要性を再認識させるきっかけになる」との意見もあった。また「県は平時から、民間航空や海運事業者の指定公共機関を指定して、速やかに輸送力の手配ができる仕組みを作っておくべきだ」との声もあった。自治体の役割周知や、住民不安の解消につながるほか「民間空港や港を、米軍に好きに使わせないという意味でも非常に重要」とした。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、県内でも米軍基地や自衛隊配備に対する肯定的な意見が強まっていることは「ある意味で憂慮すべきこと」とし、「抑止力の強化だけではなく、外交努力による緊張緩和を打ち出していくべきだ」との提案があった。
 
■自治体任せ 避難に壁 有事想定計画

 県は、住民避難が必要となる武力攻撃予測事態などに備え、船舶や航空会社と協議を重ねている。既存の交通機関だけを使用した場合の避難日数も試算しており、今後、市町村との意見交換の場で提示し、具体的な避難パターンの作成を支援する考えだ。一方で「有事」の定義は曖昧だ。県幹部は「何が発生したら有事と捉えるのか。自治体だけで有事のパターンを想定し対処法を考えるのは困難だ」と指摘する。

 県の国民保護計画では、離島市町村は船舶か航空機で本島へ避難し、その後、県外へ避難する流れを想定している。嘉数登知事公室長は27日の県議会で、民間船舶や航空機などを使用し、避難に要する日数などを試算していることを明らかにした。2022年度末には、住民を県外に避難させるための独自の図上訓練を初めて実施する予定だ。

 ただ、県幹部は「現段階で、離島から数万人を避難させる計画には限界がある」と明かす。さらに「他国のミサイルが沖縄に向く、宣戦布告される、自衛隊や米軍基地などが攻撃される。どういう状況を『有事』として捉えるのか、それが何パターン想定できるのか。こうしたことも曖昧なままだ」と計画作成の難しさを指摘する。

 別の県関係者は、住民避難には国の積極的な関与が必要だとする。「防衛省や政権与党からは防衛費倍増や敵基地攻撃能力など有事を見据えたかのような議論ばかりが聞こえるが、住民避難は自治体任せ。無責任だ」と不信感を募らせる。

 その上で「避難計画は重要だが、議論がより具体的になれば危機感をあおることにもつながりかねない」と苦しい表情を浮かべた。(政経部・大野亨恭)