沖縄そばを作る「楚辺」の店主、國吉真さん。原材料費などが高騰し「経営は厳しい」と話す=3日、那覇市楚辺の同店

[現場から 7・10参院選](1)

 「いらっしゃいませー」。3日昼過ぎ、那覇市楚辺の住宅街にある沖縄そばの店「楚辺」は観光客らでにぎわい、店員が接客に追われていた。店の前は入店待ちの客であふれるほどの盛況ぶり。「最近、急激に客足が戻ってきた」と目を細める店主の國吉真さん(43)だが、複雑な表情でこう続けた。「節約しながら収支はどうにかトントン。正直、経営は厳しい」。

 円安やウクライナ情勢を背景とした、原材料やエネルギー価格の高騰で、麺や肉、かまぼこ、野菜、調味料に至るまで仕入れ値は前年比1~2割も上昇。電気、ガスの料金も上がり、負担が重くのしかかる。

■「解決策を議論して」

 物価高騰は10日投開票の参院選でも「最大の争点」と位置付けられているが「論戦を見ていても、具体的な解決の道筋が見えない」と國吉さん。

 一方で「国際情勢も絡み、かなり難しい問題」とも思う。目の前の困難をどう乗り越えるかも大事だが、長い目で未来を見据えてどうしていくかも今回の選挙を通し注視している。
 

 「例えば国産の米粉麺があってもいい。食料自給率を上げて海外への依存度を低くするなど、国のあり方を変えるくらいの抜本的な解決策を議論してほしい」

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 沖縄そばの店「楚辺」では新型コロナウイルス禍で客足が遠のいた昨年、最低賃金改定に伴って従業員の給与を引き上げていた。今年2月からコロナ融資の返済も始まる中で物価高騰が経営を直撃。コストを吸収できなくなり、5月、やむなくそばの料金を100円上げた。

 「値上げしてもまた来るから」と話す常連客もいるが、コスト高が落ち着く気配はない。今後のさらなる値上げが頭をよぎり、客足に響かないかと不安は募る一方だ。

■「従業員の生活も守らないと」

 北谷町の「yokodaパン工房」の店主、與古田拓也さん(33)も小麦など原材料の価格高騰に直面。2019年の開業以来、地域に愛される店づくりを心がけてきたが「これ以上コストが膨らめば、3人いる従業員のためにも値上げを考えなければならない」と悩んでいる。

 参院選の前に注視するのは政府の予算の使い方。限られた財源を、コロナや物価高など、多くの国民が直面する課題に適切に配分してほしいと考えている。

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部屋のクーラーの電源を入れる女性。「子どもたちの熱中症が怖くて、節約は難しい」と話す=4日、宜野湾市

 物価高は家計も直撃している。帝国データバンクの調査によると、食品主要105社が年内に実施または予定している値上げは1万品目超にも上る。

■「生活防衛」に動き出す消費者

 こうした中、消費者は「生活防衛」に動き出している。宜野湾市の女性(31)はスーパーのセールの時間を狙って買い物するなど、節約を意識して行動するようになった。

 ただ、光熱費の節約は難しく「4歳と3歳の子どもの熱中症が怖い」と困った様子。今回の選挙では「子育てや教育をどれだけ重視しているかも注目したい」と話した。

 りゅうぎん総合研究所の武田智夫常務は、ウクライナでの戦闘が終わっても、ロシアへの制裁は続くと分析。原油などのエネルギー価格の高騰が続き、関連して物流コストも高止まりする恐れがあると見通す。

■「貧困対策に注目して投票する」

 その上で「生活に困窮し、もともと最低限の生活を送っている人にとってはかなり厳しい状況。セーフティーネットの強化が急がれる」と指摘する。

 3日、那覇市のスーパーを訪れた女性(57)は「油が高くなったから、揚げ物もしなくなったさー」とため息まじり。候補者には「政治家は、子どもや孫たちが暮らしやすい社会をつくる責任がある。そのための政策を示して」と注文しつつ、「物価対策と子どもの貧困対策に注目して投票に行くつもり」。

(社会部・島袋晋作、普久原茜)

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 参院選投開票日が10日に迫っている。物価高騰、コロナ対策など、争点の現場から有権者の視線を追う。